深い雪に耐え 命をつなぐブナ。

 冬の太陽は見とおしの良くなった森を 低い位置から隅々まで照らし ブナの長い影を山の斜面に映し出す。
ブナの白い滑らかな樹肌に鈍い光があたり それがことさら美しい。犀川のダム湖に北からの渡り鳥が降り立ち周りの山が薄化粧をすると もう来年まで 山の地肌は見られない。 信州北部のブナ山は 雪降りの日が続き 見わたす限り墨絵のような世界をつくる。 朝の冷気に煙が棚引いて のどかな村里の目覚めを感じる。 ナナカマドの実に積もった丸い雪帽子が凍てついている。 時折吹き抜ける北風が こずえの雪を吹き飛ばす。 乾いた雪は風に吹かれて 雪カーテンとなり 静寂の世界に動きを与える。
枝先の冬芽は硬く閉じて 厳しい冬をやり過ごす。
粉雪をともなって 北風が吹き荒れる山麓に キツツキのドラミングが寒々響く。 めっきり少なくなった餌を求めて ふもとまで降りてきたのだろう。 空は相変わらず鉛色。 きっと明日も雪降り。 先日通った道も一面の雪原と変わり その位置さえわからない。 新雪は軟らかく スノーシューですら埋まり 歩きにくい。 重いカメラと三脚を担ぎ たらたらと汗を流し 上衣を脱ぎ捨て 雪中行する姿は よそ目には さぞかしクレージーに見えることだろう。帰り道ホワイトアウトで迷ったらどうしよう 不安な気持を打ち消しながら 出会う度に違う表情を見せてくれる 雪景色の誘惑に負けて 雪山通いが続く。





冬                            
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